STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは? 基礎から導入事例まで解説 <br>〜基礎編〜
STOについて

STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは? 基礎から導入事例まで解説 
〜基礎編〜

STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは?
基礎から導入事例まで解説 〜基礎編〜

昨今、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)に次いで世間の注目を浴び始めたSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)。
果たして、この新しい試みは、市場にどのようなインパクトを与えてくれるのでしょうか。

本記事「STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは? 基礎から導入事例まで解説」では、全5回にわたってSTOの基本情報について記述していきます。
 
 
 

1. そもそもトークンとは何か

STO(セキュリティ・トークン・オファリング)の説明に入る前に、トークンのそもそも論について解説したいと思います。

 

1-1. トークンとは法定通貨の代わりになるもの

トークン(token)は「しるし・象徴・証拠品・引換券」といった多義語です。
経済分野のトークンは「法定通貨の代わりになるもの」と考えると分かりやすいです。
 
例えば、楽天やアマゾンのポイントサービスは、トークンに該当します。
購入額に応じて還元されるポイントには「1ポイント=1円」といった法廷通貨に換算できる価値が設定されており、現金と同様に商品を購入することができます。
 
この他にも、切手、収入印紙、或いは割引クーポン等々、日常生活には様々なトークンが存在しているのです。
 
 

1-2. 暗号資産分野のトークンの定義と類型

(1)一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)の定義

一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)の『新しいICO規制についての提言』(2019年3月)によれば、仮想通貨分野のトークンは「企業や個人によりブロック・チェーン上で発行された独自の通貨」と記述されています。
 
その他関連業界でも、概ね同じ意味で理解されていると言ってよいでしょう。
 
 
トークンとコインとの相違については、
既存のブロックチェーンを利用する場合はトークン独自のブロックチェーンを利用する場合はコインと分けられています。
 
 
トークンの分類に関しては、現時点では標準化には至っていませんが、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の『FINANCIAL SERVICE & TRANSACTION GROUP NEWSLETTER』の『Initial Coin Offeringについて』(2017年9月)に記述される5類型とスイスの金融市場監督局(FINMA)が公開する『ICOガイドライン』(2018年2月)の3類型が多用されているので 参考までに紹介します。
 
 

(2)アンダーソン・毛利・友常法律事務所の5分類

参考URL:https://www.amt-law.com/asset/pdf/bulletins2_pdf/170915.pdf(最終確認日:2019/5/30)

 

 

(3)スイス金融市場監査局(FINMA)の3分類


参考URL:https://www.finma.ch/en/~/media/finma/dokumente/dokumentencenter/myfinma/1bewilligung/fintech/wegleitung-ico.pdf?la=en(最終確認日:2019/5/30)
 
 
両分類を比較すると、
「仮想通貨型トークン」と「ペイメント・トークン」、
「アプリケーション・プラットフォーム型」と「ユーティリティ・トークン」、
「ファンド持分型」と「アセット・トークン」
が対応していることが分かります。
また、これらはトークンの機能で場合分けされていますが、ものによっては重複することがあります。
 
 
例えば、イーサリアム(Ethereum)のトークンは仮想通貨型(ペイメント・トークン)とアプリケーション・プラットフォーム型(ユーティリティ・トークン)の性質を持っており、店舗決済やウォレット間の送金に加えて、スマート・コントラクトや独自トークンの発行サービスを提供するプラットフォームの利用料としても使用されています。
 
 
注意すべき点は、発行したトークンがどの性質に適合するかによって、法律上の規制内容も変わってくるということです。
 
この点に関しては、次回以降に詳しく述べたいと思います。
 
 

2. STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは何か

2-1. セキュリティ・トークンとは

それでは、上記を踏まえたところで「セキュリティ・トークンとは何か」について説明します。
2019年6月現在、セキュリティ・トークンには複数の意味があることが確認されています。
 
例えば、「不動産やローン債権等の資産を担保に発行されたトークン(トークナイズ・アセット)」或いは「企業の所有権を表すトークン(エクイティ・トークン)」等です。
ただ、これらは「セキュリティ・トークンの資産価値を何によって裏付けるのか?」といった内容であり、セキュリティ・トークンそれ自体の説明にはなっていません。
 
根本原則として「どこまでがセキュリティ・トークンなのか」といった判断は「証券の要件を満たしているか否か」に依拠するものです。
 
本来、「セキュリティ(証券)」とは一定の法律で定められた権利・義務を証明する手形であり、トークンの発行者と所有者の外部から内容を証明できることが前提となっています。
なので、各国の金融関連法に定められる証券の枠組みや管理プラットフォームの存在が必要不可欠です。
 
 
そして、証券がブロックチェーン技術でデジタルアセット化されることで、従来の証券では実現不可能だった革新的な価値が生み出されると期待されています。この点については次項「STOの可能性」を御参照ください。
 
以上のことから、STOの入門編となる本記事では、セキュリティ・トークンの 定義を「証券をブロックチェーン技術によりデジタルアセット化したもの」とします。
 
これは、2019年1月に一般社団法人電子証券取引交換業協会が新型通貨の適正を考える議員連盟にて発表した『電子証券通貨における動向と将来の展望』の資料から引用しています。詳しくは下記をご覧ください。
参考URL:https://sto.or.jp/wp-content/uploads/2019/01/20190130%E8%AD%B0%E5%93%A1%E9%80%A3%E7%9B%9F%E7%99%BA%E8%A1%A8%E7%94%A8%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%99.pdf(最終確認日:2019/5/30)
 
※注意
混同しやすい概念として情報管理分野の「セキュリティ・トークン」があります。
これは使い捨てのパスワード(ワン・タイム・パスワード)を生成するソフトウェアの呼称で「安全性」を意味するセキュリティとなります。
Google等で「セキュリティ・トークン」と検索すると、こちらに関する情報も数多く掲載されていますので、お間違いのないように御注意ください。
 
 

2-2. STOはセキュリティ・トークンを活用した配当型の資金調達

さて、いよいよ本題の「STO(セキュリティ・トークン・オファリング)」の内容に入ります。
 
STOとは、「Security Token Offering」の略称で、企業や個人が何らかの資産価値を担保にセキュリティ・トークンを発行して、それらを投資家に販売することで資金を調達することをいいます。
 
 
セキュリティ・トークンの原資となる資産価値が上昇することで、配当が発生する点は株式の概念とよく似ています。
 
アメリカやシンガポール等の国々では、「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)からSTOへ」という潮流が一足早く生まれており、いくつものプロジェクト事例が報告されています。
その一方、日本国内では、関連業界と金融庁が主体となり、仮想通貨やSTOに関する法整備が開始され、2019年3月中旬に「仮想通貨(暗号資産)関連の資金決済および金融商品取引法の改正法案」が国会に提出されました。
 
そして、2019年5月末に衆議院で賛成多数で可決され、今後、衆議院内で審査及び審議を経て2020年6月までに施行される運びとなっています。
グローバル的にはかなりの遅れを取っていますが、国内市場では各業界が法律施行日に向けて、STO関連のビジネスチャンスをどう見出すのか、目が離せません。
 
 
 

2-3. STOの可能性

⑴ ICOとの比較から見るSTOの魅力とは法的な安全性を基盤としていること

「ICOからSTOへ」と言われているように、STOはICOに代わる資金調達の仕組みとして注目されています。
 
ICO(イニシャル・コイン・オファリング)とは「新規仮想通貨公開」を意味しており、企業等が電子的にトークン又はコインを発行して「公衆」から資金を調達することをいいます。
大きな特徴として、スタートアップ企業が迅速に資本を形成できるので世界中でブームとなりました。
 
2017年後半から2018年までの市場規模は約2兆円。これはIPO(イニシャル・パブリック・オファリング)の世界市場の約10%に匹敵する驚異的な数字です(2017年)。
 
しかし、各国の法整備や安全管理体制が追いつかなかったこともあり、実際の案件では資金調達の目的である事業の不履行や、それらを悪用した詐欺や不正行為が多発しました。
その損失額は1日当たり900万ドル、日本円に換算すると約10億円。実数はこれを大きく上回るでしょう。
 
それゆえ、各国の金融行政はICOに関する規制を厳格化しつつあり、2019年現在は投資リスクを引き下げる証券として法的な安全性が確保された「STO」への関心が高まっているのです。次の表は、ICOとSTOの相違点を簡単に整理したものになります。
 
 
 

ICOとSTOの比較


一般社団法人電子証券取引交換業協会『電子証券通貨における動向と将来の展望』を元に作成
 
 
 

⑵ 所有権の分割による新しい資金調達が可能になる

さて、STOの可能性は金融関連法に基づく安全管理に留まりません。
ブロックチェーンを活用した証券のデジタル化によって、不動産や芸術作品等といった実物資産の所有権を分割化できると言われています。
 
実際に、ビットコインやイーサリアムは「1単位」を細分化して「0.1」や「0.01」単位で取引されていますが、不動産や芸術作品の資産価値をセキュリティ・トークンに置き換えれば、仮想通貨と同じ売買システムが構築可能となり、複数の購入者で資産を共有できるのです。
 
この仕組みが資金調達に繋がる具体例を想定してみましょう。
 
ご存知の方もいると思いますが、2017年11月、アメリカ・ニューヨークのクリスティーズ・オークションでレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「サルバトール・ムンディ」は手数料込みの4億5030万ドル(508億円)で落札されました。
これは美術品史上、最高額として世界を驚かせましたが、得てして歴史性を持つ美術品はあまりにも高額です。
 
しかし、アート作品がモノである以上、風化を防ぐことはできません。
もし、美術館で保管する絵画や彫刻が破損した場合、莫大な補修費をどのように捻出すればよいのでしょうか。
 
そこで、STOです。
すなわち、芸術作品の将来価値を鑑定によって現金に換算し、それを裏付けにして補修費分のセキュリティ・トークンを発行して購入者を募れば、投資対象として資金を集めやすくなります。
さらに、セキュリティ・トークンがブロックチェーンを基盤とすることで、芸術作品の価格変動を正確に記録することができます。
 
それによって相場が可視化されると、配当額をイメージしやすくなります。これは投資家への交渉材料として有益な情報になるでしょう。
 
所有権の分散・相場の可視化・将来価値の査定、これら3つの条件がセキュリティ・トークンの発行で満たされれば、その他の実物資産を活用したSTOが生まれるかもしれません。
 
 
 

総括

以上、STO基礎編として基本情報を整理しました。
 
各国で注目されるSTOの概念は試行錯誤の段階なので、信頼性の高い情報の線引きが曖昧な状態です。
その意味では、情報源の主体を精査していくことが大切になります。
 
また、本記事では、STOに特化したメリットを2点ほど扱いましたが、セキュリティ・トークンそれ自体が持っている新規事業創出の可能性は、これだけではありません。それもまた随時、企画として扱っていければと思います。
 
最後に、本記事の要点を下記にまとめて末筆とします。
 

まとめ

★1トークンとは「法定通貨の代わりになるもの」
 
★2仮想通貨分野のトークンは「企業や個人によりブロック・チェーン上で発行された独自の通貨」
 
★3セキュリティ・トークンは「証券をブロックチェーン技術によりデジタルアセット化したもの」
 
★4STOとは企業や個人が何らかの資産価値を担保にセキュリティ・トークンを発行して、それらを投資家に販売することで資金を調達すること
 
★5ICOよりもSTOが注目されるのは、証券として法的に管理することで投資リスクを低減できるから
 
★6所有権の分割化・価格変動の可視化・将来価値の査定が連動することで新しい資金調達が成立する
 
 
STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは? 〜導入事例編〜
 
 

著者プロフィール

森本 恭平
1990年生まれ。北海道出身。東北大学法学研究科を修了し、公共法政策修士を取得。
東日本国際大学・福島復興創世研究所の准教授を経て、現在は執筆活動及び金融関連の仕事に携わる。
専門はレジリエンスの社会政策論・社会思想論。その他福島県総合計画審議委員会審議員を歴任。


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